「【アイドルマスター】3A07 〜Memories are here〜」感想-その2

「【アイドルマスター】3A07 〜Memories are here〜」感想-その1 - 青い月の高原の続きです。
6:40〜16:20の中盤について。


この感想はネタバレ満載なので、動画未見の方はまず最初に動画を見てください。
初見コメ非表示、最大画面推奨です。


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6:44 歩いてくるやよいおりみき。やよいのガルウイングまで再現!すげぇ!

7:09 「兄弟分なの!」と言いながら飛び跳ねてやよいの肩を叩くように手をのせる美希。
(いや姉妹だろ)と突っ込みつつ、その重量感のある動きに目を奪われる。伊織の目がきちんとその動作を追っている。


「あれぇ?あずささん そんなに食べるんですかぁ?」とやよい。
黙るあずさ。
「ねぇあずさ、それってプロデューサーさんの分?」
ここで作者はドラマの演出と同時に煙幕をかけている。しかしこのセリフは美希しか言えない。
この台詞は「空気を読まない」美希だから言えるのではなく、直感で相手の深層に踏み込む美希ならではの鋭さが現れている。
ハッ!と伊織の目が動く
ほんのわずかの間が空いて、「あら、やだ…… ふふ、秘密です」とあずさの応答。
ここからあずさは「Pと付き合っていることをみんなに隠す」という芝居に入り込む。
だけどゆっくり話していては現実が「もしも」を打ち壊してしまう……。
いつものあずさなら考えられないつれなさで「それじゃみんな、また……ね」とあくまでにこやかにその場を逃げ出していく。


7:46 小さく口を開けて呆然と見送るやよいと、悲しさと苦しさに眉をひそめながら口を引き結ぶ伊織の対比。

「プロデューサーの分って……」と美希に批判とも疑問とも思える言葉を投げる伊織に、美希は当然のように「あずさはそのつもりだったみたいだけど」と言ってのける。
そして風が3人の髪を揺らす。場面に曲より先に『隣に……』のモチーフが強く表現され始める。
「空にだかれ 雲が流れてく 風を揺らして 木々が語る」


あずさは『隣に……』のストーリーラインに乗って彷徨ってゆく。
Pと共に、Pを探して、Pの死に向かって。
「目覚める度 変わらない日々に 君の抜け殻探している」


8:04 急な坂を登るシーン。ここはその後のPの発作への伏線でもあるけど、
「この坂道をのぼる度に あなたがすぐそばにいるように」
を描く場面でもある。
あずさはPが生きていると思っているわけではなく、現実と過去、そして願望で三重写しになる世界を歩く。
落ちる枯葉は「近づいてく冬の足音に」の意味でもあるし、Pの死を暗示するモチーフでもある。


Pと手をつなぎながら歩くあずさがつないでいる手を見下ろす。あずさの心の中でPが握る手の感触が蘇る。


9:15 あずさの手をつかんでPが走り出したときのあずさの笑顔が切ない。

夕焼け前の強い西日を幻想的に描いた坂の上。間違ってたらすいませんだけど、七夕Pの絵作りが素晴らしいと思う。

(2009/11/28追記:ふう、七夕レポート:シネ☆MAD3rdあれこれ その3で解説されたので映像効果は七夕Pであってた。よかった。でも俺は夕焼け前ギリギリぐらいと思っていたけど、夕焼けでいいらしい)


10:43 トランプを受け取って、一瞬首をかしげるあずさ。


11:04 プロデューサーの倒れるシーンまできて、はじめてあずさの現実と過去が乖離する。
プロデューサーに走り寄る過去のあずさ。立ちすくむ現実のあずさ。


11:30 苦しみながらもあずさに心配させまいと笑顔を返そうとするP。


11:41 事切れるPと力の抜ける手、思わず手を引くあずさ。
「もしもボクが
 空に帰る刻が来たらどうするの?
 すごく泣いて 手をつかんで
 離れないのかな」
画面端で風にあおられた傘が右に、左に転がる。
当日は雨だったのだろうか。
果たして坂の上から美しい光景が見えたのだろうか。
それとも坂の上の景色はあずさが作り出した「もしも」なのだろうか。
この動画を見た限りでは俺にはそれはわからなかった。



「もしも」から現実に引き戻され、あずさはPの死以降の体験を、いままで感じなかった現実感を伴って追体験する。



12:05 壁を叩いて悲しむ真、千早の膝でひたすらに泣く春香。
対照的に涙をこぼすまいと上を向くが、どうにもこらえきれない千早。
腕を組み、口を引き結び、おそらく奥歯を食いしばっている律子。

駆けつけ、あずさに何があったのか、どうなったのか、おそらく「嘘ですよね」とあずさに問おうとする雪歩。
それを律子が制し、首を振ると溢れる涙と共に崩れ落ちる雪歩。


事務所から駆けつけたであろう小鳥が、事務服のまま処置室から出てきて、中に向かって頭を下げ、静かに両手で扉を閉める。

これは開始時のお尻で扉を閉めるシーンが小鳥の本性ではなく、演じた「茶目っ気」、もしかしたらあずさへの気遣いでさえあることも示している。


狭心症だったそうです。でも手術を見送っていたみたい。『あの人といっしょに、坂道を登り終えるまでは』って……」
こはちょっと気にかかった。小鳥の他の気遣いと比較して、「あずさのせい」ととれなくもない言い方なので。まあこれは感覚の違いかな。


さっきまで大泣きしていたはずなのに、こらえきれず嗚咽する千早を体を起こして抱きかかえるようにして慰める春香。ここでも春香の芯の強さが表現されている。
座り込む小鳥の横で、あずさの右手には4枚のトランプが握られているのが小さく表現されている。
この動画は画面端の小さなところにこそ演出を埋め込むことに力を入れているなあ。
立ち上がる小鳥の横で、呆然とするあずさ。普段なら膝の上に手を置くあずさだが、左手の手のひらは上を向いて完全に脱力している。


立ち上がってずっと腕を組んだまま固まっている律子を突き飛ばすようにして振り向かせると、泣いていい、と告げる小鳥。一瞬拒否するように身を引くが、小鳥の胸に飛び込んで、爆発するように泣き出す律子。

窓の外にひまわり。
Pが死んだのが夏(でもひまわりは幅が大きいから、雨のことまで考えると7月はじめかも)で、現在は落葉が始まる10月か11月。2〜3ヶ月あずさが自失していたことがわかる。
(2009/11/28追記:3A07 勝手に解説: 全てが台無し―雑記帳―を読んで気がついたけど、カメラに日付が入っていましたね。コンサートは2009/8/4。Pが死んだのはその少し後かな。)


13:41 いままで夢のように通り過ぎていた時間を現実として実感したことで、あずさは仲間たちの言葉に再度思い至る。
フラッシュバック。
アナグラム」「ひっくり返してみるとか?」の二つから、トランプを並べ替え、逆さに見ることでその意味に気づくあずさ。


ここでひとつだけ異議が。
トランプの謎は、Pが並べるスピードをもっとゆっくりにして、1字づつ指で示していく、とか、このシーンで明確に明かしてしまってよかったと思う。
動画を止めてじっくり考えれば、字幕の「愛しています 愛しています」とあわせて理解できたと思うけれど、俺は初見ではわからなかった。
そのため「あれ?いま意味を明かしたんだよね?」という感じがあるにもかかわらず、この後エンディングまで「えーと、どういう意味だろう?」と考えてしまい、集中できない部分があった。


自分の部屋へと駆け戻るあずさ。
実際にそこにPがいるわけではない。
これは「幸せのマイホーム」。青い鳥は最初からそこにいました、という表現。
自分の心の中にいるPの元へ走った、とも言える。


Pの「ことば」を受け取れていなかったあずさは、「自分の中のP」に対しても自信がもてなかった。
「自分の中のPが抱いている気持ち」と「Pの本当の気持ち」が一致しなければ、あずさはいつまでもPを探し続けるしかない。
伝わっていない言葉、失われた『愛してます』を見つけ出すことによって、あずさはPに愛されてたという誇りと自信を取り戻す。


ウエディングドレスやキスは実際にあずさが想像したというよりは、満たされた感覚の表現、あずさの幸せを願う造り手の「もしも」。


15:58 「事務所のみんなに、たくさん心配かけちゃいました」の後にPの言う「・・・・・・みんなの、所へ」は、事務所のみんなのことだけではない。
「言葉を伝えるべきみんな」
待っててくれているあずさのファン、そしてPとあずさが「伝えたい」と思うすべての人々を意味している。


ことばを伝える、表現する決意。
「行ってきます」というあずさのりりしさ。


自分の中にはPがいる。
自分はPを受け取れている。
自分がこれから為すことはPが為すことでもある、という確信を持ったあずさは、Pと自分を表現するために、「幸せのマイホーム」から外へと踏み出していく──


16:10 Pに背を向けたあずさの目は遠くをまっすぐ見ていて、歩みはステージへとあがるときの歩調。




画像大目で中盤の感想でした。
続きはまた明日。
「【アイドルマスター】3A07 〜Memories are here〜」感想-その3 - 青い月の高原