「瑠璃色金魚と花菖蒲」を読み解いてみる

瑠璃色金魚と花菖蒲、つむこーどの方で解釈論議したくない?
みたいな話が上がっていたので、とりあえず俺の受け止めを書いておきます。



いちおう下記二つの考察記事には目を通しています。

白石紬ソロ曲「瑠璃色金魚と花菖蒲」の個人的解釈
http://siramune.hatenadiary.jp/entry/2017/06/30/222128

『瑠璃色金魚と花菖蒲』を歌詞とコミュから考察する
http://www.hu-to.com/entry/ruri_iris/

はじめに

歌詞考察というのは正解を導き出すのではなく、感じ方のバリエーションを増やして重層的にするための作業だと思ってます。
物作りする人間として、最初に作ろうとしたコンセプトと出来上がったものが大きく異なることがよくあるからです。
作り手は受け手よりはるかに考えていることもあれば、人に指摘されてはじめて無意識の表現が浮かび上がることもありますよね。
部分を重視して、全体の整合性をあえてとらないこともありますし。

白石紬とは

私はメタ読みも好きです。
例えば白石紬はどういったコンセプトで作られたキャラクターか。
公式はプロデューサーのどういう欲望を刺激しようとしているのか。


私は紬は基本的には貴音のバリアント。
かぐや姫に対して乙姫もしくは人魚姫をモチーフとして持ってきていると思っています。
髪型は羽衣のデザイン化ですね。
こういうモチーフはうっすらとでも重ね掛けをすると受け手が勝手に深読みをして掘り下げてくれるので。


37人の中でまつりが「陽」のポジションなので、貴音の属性で落ちてしまった「陰」の「姫」。
紬は閉じ込められた、救いを待つ姫です。

ほんへ

前置きはこれぐらいにして、歌詞考察。
一つの意味を取るというより、読みを並列して並べてみました。

2018/2/3追記:「愛すると消えると思ってた」を考えつくした結果、瑠璃色金魚は完全に人魚姫モチーフと思いましたのでいろいろ修正。

歌詞 考察
瑠璃色金魚は恋い焦がれる 凛と咲き誇る花菖蒲 イメージカラーとしても瑠璃色金魚は紬。金魚鉢に捕らわれている。
吐き出す空気は泡の模様 水中で喋った言葉は水の向こうには届かない
決してあなたの心に 届かないの あなたとは誰か
はなびらひらひらと 水面に落ちて震える指先 誰の指先? 水面は何の象徴か→テレビ。なにげなく見ていたテレビに映し出された「アイドル=花菖蒲」の「笑み=はなびら」に見ほれる幼い紬。テレビに手を伸ばす。→修正:はなびらはプロデューサーのスカウト。
時間が止まるわ 目が覚めた余韻の余白 呆然と見ほれる紬、もしくはそれを思い出して夢に見て、目覚める朝。→訂正:過去の憧れを思い出す。
外の世界は ねえ なんて眩しい 自分は内側にいる。捕われている。実際はアイドルはテレビの中にいるが、紬は家(金沢)そのものを檻、テレビの向こうを外、と捉えている。→修正:東京・アイドルの世界を外
嘘だとしても罪深過ぎたの 嘘=プロデューサーが自分がアイドルになれると言ったこと 罪深い=私に思い出させてしまった→訂正:私を口説いた
眩暈がしても心地いいのは もう求めてるから なんで眩暈?目が覚めた余韻と対 プロデューサーの誘いに揺れ動く自分
瑠璃色金魚が見上げるのは 凛と佇んだ花菖蒲
私 あなたのようになれたら あなた=花菖蒲
もっと上手く微笑えますか →逆接。つまり今はうまく笑えていない。笑いたい。
灯した明かりは燃えないまま 今も青く棚引いている 燻ぶって棚引く煙。心の奥に灯された熱情。
曇った硝子を溶かすほどの 秘密 もしかして私 持ってますか 雲った硝子?金魚鉢?ブラウン管? 秘密とは「アイドルになれる」力。誰に問いかけているのか
雨は空に落ち 愛すれば消えるものと思ってた 水の中から見えると雨は空の映った天井(水面に落ちる)。→訂正:水の中から見た雨。人魚と人間の恋。人魚姫が脚(いまの生活)をすてて地上(東京・アイドルの世界)に上がることを示している
鏡の世界に 逆さまに映った好奇心 鏡の世界とは? 映ってるのは自分=金魚の好奇心。自分の顔
湧き上がる思いを掬い上げては 吐き出す空気と対。
砂糖漬けにして また飲み込むの 何度もアイドルになってみたいと言い出したかった。言い出せなかった。もしくは言ってみたけど一笑に付された。→訂正:決心するまでの心の動き。アイドルになった自分の妄想。打ち消し。
あなたにいつか味見してほしいと 夢を見ながら あなたとは誰か? まあプロデューサーなんだけど、本来はファン→訂正:あなたはプロデューサー。味見はオーディション。
瑠璃色金魚が知らないのは 強く根を張った花菖蒲 どれだけの努力がそのアイドルを支えているか。もしくは、自分にどんなに素晴らしい強さがあって、どんなに美しく独り立ちできるのか。
目の前に見えるもの全てが 現実ってことはないの 狭められた自分の可能性。
あの時触れてくれた温もり 光 失くしては枯れていく 触れてくれたのは誰か。物理的に?心理的に? 夢を忘れそうになる自分。もしかしたらプロデューサーのスカウトのことでもよいかも。→訂正:ぬくもりはスカウト。
悲しみで泣く私の涙 また毒になってしまう 抜け出したい 毒は「嫌な自分」。とげとげしい、夢を押さえこんでいるがゆえに攻撃的になってしまう自分
瑠璃色金魚が見上げるのは 凛と佇んだ花菖蒲
私 あなたのようになれたら もっと美しく咲き誇れますか 外見の美しさだけではない。スッと佇む花菖蒲の美しさ。独り立ち。
瑠璃色金魚が知らないのは 強く根を張った花菖蒲
目の前に見えるもの全てが 現実ってことはないの
あの時触れてくれた温もり 光 失くしては枯れていく
悲しみで泣く私の涙 また毒になってしまう 抜け出したい
私きっと 決意。本当の自分、なりたい自分になってみせる。→訂正:もしかしたらもっとプロデューサーよりの「あなたに認められる私」


基本的には花菖蒲は、紬が憧れたアイドルであり、そしてトップアイドルとなった紬自信の重ね合わせと読みます。
紬は、そのアイドルを通して、自分の中にあるなりたい自分を発見したということですね。


詳しくは書かれませんが、おそらく古い形のしきたりがまだ残るような地方・実家で自分の夢をなんどか話したのかもしれません。
何度も一笑に付され、知らず知らずのうちに、諦めたという自覚さえなしに、なりたい自分を飲み込んでいたのでしょう。


歌詞カードにはないですが、「見つけて!」は、心の中の「本当の自分」が、日常に流される自分に対して放った言葉でもあるし、「誰か助けて!」という、つまり、プロデューサーに助けを求める言葉でもあるでしょう。
捕われの姫を助けた王子。そしてその感謝をうまく表せない(もしかしたら人魚姫の声を失ったモチーフも重ね掛け)姫を本当の自分=トップアイドルに育て上げたときの感謝、
「あんやと」の笑顔
こそ、白石紬のキャラクターデザインかなと思います。


基本的には瑠璃色金魚と花菖蒲は、プロデューサーに声をかけられてから、東京へ旅立つことを決める瞬間までの紬の心を追ったものと読めばいいのかなと思っています。
アイドルとしてデビューしてからの心情は、次の曲で聞かせてくれるでしょう。


楽しみですね!



→20180203追記:紬の人魚姫モチーフが思ったより強そうなので、花菖蒲がプロデューサーの可能性が本命な気がしてきました。曲名の「瑠璃色金魚と花菖蒲」は「紬とプロデューサー」。漠然とした広い憧れの話ではなく、プロデューサーからスカウトを受けて、上京するまでの紬の心情と決意を結構具体的に書いた歌詞と想定できます。